相続税の基本(1)「相続に関する基礎知識」


相続税の基本①

はじめに

相続税と聞くと、どのようなイメージを浮かべますか?「相続税なんてお金持ちのおうちが心配すること、自分のうちには関係ない」なんて思われる方が意外と多いのではないかと思います。
しかし、平成27年1月1日より相続税の基礎控除額、簡単に言いますと、相続税がかからない財産の合計額が40%も小さくなってしまったのをご存じでしょうか。
この改正により東京都23区内に一戸建をお持ちのご家庭では相続税がかかる可能性が高いのではないかとまで言われています。今それだけ相続税が他人事でなくなっているのです。

基礎控除額の改正

改正前
(平成26年12月31日以前相続開始)
改正後
(平成27年1月1日以後相続開始)
5,000万円
+
1,000万円×法定相続人の数
3,000万円
+
600万円×法定相続人の数

※法定相続人については後ほど説明いたします。

またもう一つの大きな改正として最高税率の引上げがありました。平成27年1月1日以後相続開始分より最高税率が50%から55%、税率段階が6段階から8段階となりました。
この二つの改正の前と後との簡単なシュミレーションを作成してみました。

相続税早見表

(例)配偶者あり、子2人の場合

(単位:万円)

課税価格
(基礎控除前の金額)
改正前 改正後 差額
5,000 0 10 10
10,000 100 315 215
15,000 463 748 285
20,000 950 1,350 400
25,000 1,575 1,985 410
30,000 2,300 2,860 560
35,000 3,175 3,735 560
40,000 4,050 4,610 560
45,000 4,925 5,493 568
50,000 5,850 6,555 705

注)税額控除は配偶者の税額軽減のみとして計算しています。

注)万円未満四捨五入としています。

基礎控除額の縮小が納付額の増加に大きな影響を及ぼしているのは一目瞭然かと思います。

「うちは相続税かかるかしら?」
「今から何か準備できることはないの?」
こんなお悩みに少しでもお役にたてますよう、ここからは相続税の基本をご説明したのち、心構え、対策等を何回かに分けてお話させていただきたいと思います。

相続税がかかるもの

相続は、個人の死亡により発生します。
相続とは、その死亡した個人(「被相続人」といいます)が生前より所有していた財産を受け継がせることです。この財産には、預金、株式、土地、建物などいわゆる「プラスの財産」はもちろんですが、借入金や未納の税金などいわゆる「マイナスの財産」も含まれます。具体的には以下のような財産が対象となってきます。

プラスの財産とマイナスの財産の例示

プラスの財産 マイナスの財産
・不動産
 →宅地、農地、山林、住居、店舗など
・金融資産
 →現金、預貯金、有価証券など
・動産
 →車、宝石、骨董品など
・その他
 →ゴルフ会員権、特許権など
・借入金
・公租公課
 →所得税、住民税、固定資産税
・その他
 →未払費用、未払医療費など

また、本来の財産ではありませんが、被相続人の死亡を原因として相続人に支払われる生命保険金や死亡退職金などがあります。これらは「みなし相続財産」と呼ばれ、相続税の計算をする際、相続財産に含めなくてはなりません。

ここで一つ疑問が出てきます。そもそも相続人は絶対に財産を引き継がなければならないのでしょうか?例えば、プラスの財産よりマイナスの財産の方が大きかったら?またはマイナスの財産のみだったら?相続人が返済義務を負うことに・・・なんてことが起きてしまいます。それでは遺された家族の生活を保障するという相続の本来の趣旨から外れてしまいます。そのため、民法では相続人の権利を保護するために相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に相続の承認または放棄の意思表示ができることになっています。

相続の仕方

(1)単純承認 プラスの財産、マイナスの財産すべて引き継ぐ
(2)限定承認 プラスの財産を限度としてマイナスの財産を引き継ぐ
(3)放棄 すべての財産を引き継がない

※(2)(3)を選択する場合、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し出なければなりません。

相続人とは?

相続人とは被相続人と一定の関係にある人(法定相続人)を言います。具体的には配偶者、子、両親、兄弟姉妹などがあたります。相続人には相続の順位が民法で定められており、配偶者は必ず相続人となりますが、配偶者以外の人は、次の順位によります。

相続の順位

第1順位 被相続人の子
その被相続人の子が既に死亡している場合には、その子(被相続人の孫、 代襲相続人と言います)
第2順位 被相続人の父母または祖父母
第2順位の人は第1順位の人がいないとき相続人となります
第3順位 被相続人の兄弟姉妹
その被相続人の兄弟姉妹が既に死亡している場合には、その子(被相続人 の甥、姪、代襲相続人と言います)
第3順位の人は第1順位、第2順位の人がいないとき相続人となります

相続人はこの順位に従って相続をしていくわけですが、財産の分配割合は「指定相続分」または「法定相続分」によります。
指定相続分とは被相続人が遺言により自ら指定するかまたは第三者に委託して定める相続分です。被相続人が自由に指定できるため、「遺留分」の問題なども発生する可能性があります。これについては次回以降にお話させていただきたいと思います。
一方、法定相続分とは民法の規定により定められている相続分です。相続人の順位に従って以下の割合により分配していくことになります。

 

法定相続分

法定相続人 法定相続分
配偶者+子(または孫) 配偶者1/2
子(または孫)1/2
配偶者+父母(または祖父母) 配偶者2/3
父母(または祖父母)1/3
配偶者+兄弟姉妹(または甥、姪) 配偶者3/4
兄弟姉妹(または甥、姪)1/4

※子供(または孫)、父母(または祖父母)、兄弟姉妹(または甥、姪)がそれぞれ2人以上いるときは、原則その相続分を均等に分けます。

なお、民法に定める法定相続分は、相続人の間で遺産分割の合意ができなかった場合の財産の取り分であり、必ずしもこの相続分で分割しなければならないというわけではありません。

次回は相続税の計算についてお話させていただきます。


この記事を書いた専門家

杉本 聡子
福本貴久税理士事務所 税理士・AFP
税理士・AFP 杉本聡子

中小企業経営の家庭に育ち、自身も総務・人事・経理に携わった経緯がある。中小企業経営者の苦労を最も身近で見てきた経験から「失敗しない経営者の世代交代」をモットーにアドバイスを行っている。

関連記事

↑ ページの先頭へ