相続放棄手続きと使い方のポイント


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相続放棄とは

 相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産を放棄し、一切の財産を相続しないことです。この「一切の財産」には、借金などといった、被相続人の債務(マイナスの財産)も含まれます。被相続人のマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続放棄の手続きをとることが考えられます。

相続放棄の手続

どの裁判所に申し立てるか

 相続放棄は、家庭裁判所に申し立てることによってなされます。ここで注意すべきなのは、相続人ではなく、被相続人の最後の住所地を基準として、申立先の家庭裁判所(管轄)が決まるということです。管轄を調べたいときには、裁判所ウェブサイトが参考になります。

必要書類

 申述人(放棄する方)が被相続人の配偶者の場合、一般的に、次の書類等が必要になります。

  1. 申述書
  2. 申述人の戸籍謄本
  3. 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
  4. 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
  5. 収入印紙800円分(1人につき)
  6. 連絡用の郵便切手(裁判所によって異なります)

 申述人が被相続人の配偶者でない場合(例えば子の場合など)には、必要書類も変わってきますので、ご注意下さい。

期間制限

 相続放棄の申述は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内になされなければなりません(民法第915条1項)。この3か月は、「熟慮期間」と呼ばれています。
 この熟慮期間の起算点は、被相続人の死亡時ではなく、原則として相続人が相続開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時を意味すると解されています。
 例えば、被相続人に妻子があり、その妻子が相続放棄をした場合、被相続人の父母は被相続人の死亡を知るのみならず、妻子の相続放棄の事実を知らない限り、自己が法律上相続人になった事実を知っていることにはなりません。すなわち、妻子の相続放棄の事実を知った時から熟慮期間を起算することになります。

熟慮期間を過ぎてしまったら

 熟慮期間内に相続放棄又は限定承認の手続きをしなかった場合は、単純承認(マイナスの財産も含め、相続人が被相続人の財産をすべて相続すること)したものとみなされます(民法第921条2号)。

 もっとも、熟慮期間内に相続放棄の手続をしなかった場合でも、特別な事情があれば、相続放棄が認められる場合があります。
 例えば、相続人と被相続人が疎遠である、相続財産が全くないと誤信したことに相当の理由があるなどの特別な事情がある場合、相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常これを認識すべき時から熟慮期間を起算することが認められることがあります。

熟慮期間の伸長

 熟慮期間の経過前であれば、熟慮期間の伸長を請求し、家庭裁判所が審判により期間を伸長することができます(民法第915条1項但書)。
 熟慮期間伸長の申立の審理の際には、相続財産の構成の複雑性、所在地、相続人の遠隔地所在などの状況のみならず、積極、消極財産(プラス、マイナスの財産)の存在、限定承認をするについての共同相続全員の協議期間並びに財産目録の調整期間などが考慮されます。

相続放棄の使い方

 前に述べましたように、相続放棄は、被相続人の被相続人のマイナスの財産がプラスの財産を上回る場合に有効な手段です。他に相続放棄が用いられる例として、相続財産をすべて一人の相続人に集中させたい場合があります。
 なお、特定の相続人に相続財産を集中させることだけが目的の場合、「事実上の相続放棄」と呼ばれる方法が用いられることもあります。
 これは、①一人の相続人を除く他の相続人が既に被相続人から十分な生前贈与を受けているとして(特別受益)、自分の相続分はゼロであるという証明書を作成し(相続分皆無証明書といいます)、これを相続登記申請書に添付する方法、②一人の相続人が遺産のほとんどを取り、他は名目的な財産を取ることを内容とする「遺産分割協議書」を作成・添付して相続登記する方法です。
 これらの手段は、事実上、相続放棄と同じ結果をもたらすことができるものであり、3か月の熟慮期間を経過してからも利用できます。もっとも、相続人全員の合意が必要であることや、被相続人の債権者の同意がない限り、マイナスの相続財産を免れることができないと考えられる点に注意する必要があります。

<参考文献>
髙岡信男編著「相続・遺言の法律相談」(2011年、学陽書房)
内田貴著「民法Ⅳ 親族・相続」(2004年、東京大学出版会)

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